KOBE URBAN FARMING kobeurbanfarming.jp
Credit
Director : Yuri Torigaki
Designer:Ayaka Okamoto
Engineer : Taku Matsumura
都市を耕せ。
異国情緒あふれる港町神戸。洗練された街並みと豊かな自然が共存する神戸では、都市地域と農漁業地域が近接しているという独自の地形を活かし、豊かな農水産物が生産されています。
そんな多彩な農漁業や食文化を広め、さらに新しい食文化の発信地となるため、持続可能かつ神戸らしい新たな食ビジネスと食文化を育てるためのプロジェクトを実施しています。その名も「食都神戸」。
そして、世界の人々が集う食の都を実現するための取り組みの一つが、「KOBE URBAN FARMING」です。
アーバンファーミングとは、都市地域で農に関わる仕組みをつくること。小さな市民運動から始まったこの活動は、今や世界的な注目を集めているのです。
神戸市は「KOBE URBAN FARMING」と銘打ち、「都市を耕せ」を合言葉に、生産者、飲食事業者、生活者が一体となったアーバンファーミングのサイクルを推進しています。
この生産者と事業者、そして生活者の視点から、食を通した新たな都市の営みを伝えること、さらに、農村部の魅力的なスポットや体験をご紹介することを目的としたWebサイトのリニューアルをご依頼いただきました。
DOR様とのご縁。
当サイトの制作に弊社が携わらせていただくことになったのは、神戸市長田区に拠点を置くクリエイティブユニット、DOR様からお声がけいただいたことがきっかけです。
DOR様は、「デザインやアートの地産地消」をミッションとし、企業や行政、地域が抱える課題・可能性に応答するプロジェクトを生み出されています。所属されているのは、写真、建築、Webデザイン、企画など、種々様々な専門的スキルをお持ちの方々。時には、近隣のクリエイターと協業しながら、企画から制作までワンストップで行われています。
そんなDOR様を率いるご代表の岩本様が弊社へお問い合わせくださったのは、2020年のことです。
ただ、弊社は制作においてお客様を知ることを大切にしているため、ご依頼を承る際には、お客様の顔が見える、直接お話できるという場合に限っていました。
そんな中でなぜDOR様と一緒に制作させていただくことになったのか。当時対応した弊社代表に話を聞くと、「岩本様とは、よいものをつくりたいという根幹の思い、お客様への向き合い方が近いように感じたことが大きな理由でした。お客様と常に全身全霊で向き合い、その過程を私たちにも忠実に伝えてくださる。私たちの制作実績にも目を通し、リスペクトの心を持って接してくださる。そんな姿を見て、『この人と一緒によいものをつくりたい。』そう思いました。」
そうして初めて一緒に制作させていただいたのが、KOBE URBAN FARMINGの初期のサイトです。公開後も保守運用サポートという形で継続的に関わらせていただきました。
そして公開から約3年が経った頃、神戸市からKOBE URBAN FARMINGのコンセプト転換の話があがり、サイトリニューアルの提案に至ったとのこと。
結果、DOR様が継続してディレクションを担当されることになり、またこうして弊社へ制作をご依頼くださったのです。
思い描いたのは、大人の絵本。
当初、「都市部で行われている農的取り組み = URBAN FARMINGを推進すること」を目的とされていたKOBE URBAN FARMING。サイトリニューアルに際し、「農村(アグリ)ツーリズムなど、実際に農村に訪れる機会をつくること」が一番の狙いに。このコンセプトの転換に加え、ポイントとなったのは以下の2点です。
- PWA形式のサイトから通常のWebサイトに。
- メインターゲットは京阪神エリアにお住まいの子育て世代(30〜40代)。
地産地消など、食に対しての関心・こだわりを持ち始める傾向にあり、子育て世代であることから定められたターゲット。「ここに住みたい」ではなく「週末に行ってみたい」を引き出す。暮らしを知るというよりは、アクティビティを知る。お子さんも一緒に遊びに行きたくなるような親近感と柔らかさを。
そんなお話を伺っているうちに、私の中で描いたイメージが「絵本」でした。まだ知らない世界を見つけられるわくわく感や自然と戯れた幼少期を思い出すような懐かしさ。さらに今回は、記事がメインのサイトとなることも踏まえ、絵本のページをめくるようにわくわくしながら記事を読み進めてもらえたら。
そう思考を巡らせていると、お打ち合わせに同席していた岡本から「大人の絵本のような雰囲気ですよね。」とひとこと。岩本様やアシスタントの戸島様も「そうそう!」とおっしゃってくださり、全員のイメージが一致した瞬間でした。
絵本の魅力は、様々な感情を湧き起こすこと。わくわくしたり、はっとしたり、ひらめいたり、大人が忘れてしまいがちな感情を呼び起こすようなデザインを念頭に、イラストを使用しました。
また、当プロジェクトのキーワード「都市と農村をつなぐ」姿を表現するため、一本道を描写しています。遠くに見えているのは神戸の街並み。道を走るキャンピングカーには、ご両親とお子さんが乗っており、週末に家族みんなで農業体験へ向かう。そんなシーンを表現しています。
そして、当サイトに掲載されているお写真は、すべて岩本様が撮影されたもの。
スタイリッシュでかっこいい雰囲気がありながら、みなさんの真剣な表情や輝く笑顔が引き出されている素敵なお写真を存分に活かしつつ、親しみやすさや柔らかさも表現できるよう、中和を大切にしたデザインです。
制作期間を通して。
弊社事務所も位置する神戸市。そんな神戸市をより盛り上げるための当プロジェクトに、Web制作という形で携わらせていただきましたこと、本当に嬉しく、誇りに思っております。
私自身も、神戸にはまだまだ知らない魅力が溢れているんだと数々の発見があり、もっといろんな神戸の顔を見たいと感じる瞬間の多い制作期間でした。
このサイトを通じて、「なんだか面白そう」「ちょっと行ってみようかな」とみなさんの好奇心を掻き立てられることを願っております。
最後に、こうして素敵なご縁をいただくことができたのは、岩本様が弊社へお声がけくださったからだとあらためて実感しております。
日々全国各地に飛び回られているDOR様。お電話すると「今撮影で海の上にいるんです。」なんてお返事が返ってきたことも。どれだけお忙しくてもその様子を見せず、いつもわたしたちの心情も察してお心遣い下さる姿に、同じディレクターとして、そして人として、学ばせていただくことが多くありました。
この場をお借りして、あらためて感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。ありがとうございました。
また一緒に「クリエイティブ」を生み出せることを楽しみにしております。