最近フィルムカメラを購入したので、ふらっとお散歩することが増えました。相棒に選んだのは、わたしよりも年上の、50歳くらいのカメラ。シャッターを切るたびに「ガシャ!」と大きな音がして、36枚撮り終わるまでは、ちゃんと写っているかな?どんなふうに撮れているんだろう?とドキドキわくわくしながら過ごしています。現像が仕上がるまでの待ち時間さえも、なんだか愛おしく感じるこの頃です。
さて、前回のknot 東 裕紀さんに続いて、今回はパートナーフォトグラファーの吉間 完次さんにインタビューを行いました。ちょっと意外なカメラとの出会いから、吉間さんが撮影に関わらず日常生活から大切にされていることまで、これまでの制作期間を振り返りながら、デザイナーの岡本と一緒にいろいろとお聞きしてみました。

カメラとの出会い
岡本 吉間さんは、幼い頃から今のお仕事につながるような夢を持っていたんでしょうか。
吉間 いえ、実はもともと芸人になりたくて。笑
中学生の頃からお笑いをやりたかったのですが、地元の石川県ではコンビを組んでくれる相手が見つからなかったんです。どうしようかなと考えた結果、「じゃあ、自分でギャグ漫画を描こう!」と漫画を描き始めました。
岡本 まさか芸人さん志望だったとは…!「人を笑わせたい」というお気持ちが強かったんでしょうか。
吉間 それもありますね。中学生の頃は、どちらかというと斜に構えているような、ちょっと暗いタイプだったんです。でも、お笑いを見たときに、そんな気持ちを一気に吹き飛ばしてくれるような、背中をポンッと押してもらえるような感覚があって。特に、ダウンタウンさんの反骨的なパワーには、すごく憧れていました。

岡本 めちゃくちゃ面白いです!だんだんお笑い芸人さんのインタビューのようになってきましたね。笑
今のところ、まだフォトグラファーとのつながりが見えてこないのですが、どのようなきっかけでカメラと出会ったのでしょうか。
吉間 漫画を書き始めた時に、構図の勉強用としてカメラを買ったのがきっかけです。ジブリのように背景もしっかりと描き込むタイプのコミカルなギャグ漫画を描いていたので、実際に撮影したものをトレースしたくて。もともとは漫画のためでしたが、すこしずつカメラにも興味が湧いてきて、自分で写真集を買ってみたり、自然とカメラを持ち歩くようになりました。
岡本 そういった経緯で、カメラの専門学校に進まれたんですね。
吉間 そうですね。大阪の専門学校で2年間学んで、そのあとは修行のため東京に行きました。大阪に戻ってきてからは、デザイン会社でWebサイトや空間の撮影をしたり、アパレルやブライダルを撮ったり、一通り経験してから独立して今に至るという感じです。
迷いながらも見つけた、自分らしい選択
岡本 独立されてからは、どのようなお仕事をされていますか。
吉間 最初はブライダルがメインでしたね。独立するときに、前の会社からお仕事をいただける状態ではなかったので、まずは募集の多いブライダルに飛び込みました。そこにプラスして、これまでの経験を活かせる広告撮影も少しずつやりながら、そんな日々を繰り返していました。
岡本 その頃は「こういう写真が撮りたい、こんなフォトグラファーになりたい」と、思い描くものはありましたか。例えば、そのままブライダルを極める道もあったでしょうし。
吉間 ブライダルの撮影は一生に一度のおめでたいものなので、ずっと「自分が撮っていいのかな」という葛藤がありました。土日にコンスタントに撮影があるので、当日初めてお会いして、すぐに撮影が始まるんですよ。その中で関係性を築くのは正直難しくて、あの頃は気持ちの折り合いがつかない状態でしたね。向き合い方がすごく難しかったです。
それに比べて、今も行っている広告制作に対しては、自然体で向き合える感覚があったんです。ディレクターさんとの距離を縮められる会社にも出会うことができて、だんだん「こっちの方が自分には合っているのかな」と感じるようになりました。
ウィルスタイルとの出会い
岡本 たしか、Webサイトのお問い合わせフォームからご連絡をくださったことが始まりだったんですよね。
吉間 そうですね。独立して3年目の頃で、実はとても悩んでいる時期でした。少しずつ収入も安定して気持ちにも余裕が出てきたことで、「もっとお客さんと近い距離感で制作がしたい」と思いはじめていたんです。打ち合わせをして、撮影して、納品する。という繰り返しが、どこか惰性のように感じてしまって。これで良いものができているという実感も全然湧かなくて、「もっと密接につながって制作がしたい」という想いをずっと抱えていました。そんな時に出会ったのが、ウィルスタイルさんの実績ブログでした。何を大切にしているのか、お客さんとどんな関係性で仕事をしているのか、記事を読んで深く共感しました。それで、「ぜひ一度ご挨拶に行きたい」とご連絡させてもらったんです。
岡本 その後、初めて弊社事務所にも来てくださったんですよね。
吉間 代表の坂口さんとは初対面なのに2時間は喋りましたね。自分のことを知ろうと正面から向き合ってくれている感覚があって、嬉しかったことを今でも覚えています。私からの連絡はラブレターのような気持ちだったので、その想いをあたたかく受け止めてくださったことで、安心して自分の想いを伝えることができました。

制作を共にして
岡本 そんな坂口さんとのお時間からすこし期間が空いて、株式会社扇屋様(以下、「扇屋様」)の撮影で初めてご一緒できたんですよね。
吉間 ついに!撮影のお声掛けをいただけて嬉しかったです。
実は、扇屋様のご依頼をいただくまでにも坂口さんからは何度もご連絡をいただいていました。案件の相談も、そうじゃないことも。笑 ずっと気にかけてくださっているんだなと感じることが多かったですね。
岡本 ウィルスタイルとの初めての制作はどうでしたか。
吉間 自分が本当に求めていたものを見つけられた気がしました!お客さんと密に接するってこういうことなんだって体感できたんですよ。フォトグラファーって基本は撮影にしか携わらないので、当日に初めましてということが多いんです。でも、扇屋様との制作では、撮影前にお客さん先に一緒にお伺いして、お打ち合わせにも参加させてもらいましたよね。
岡本 そういえば、一緒にロケハンにも来てくださいましたよね。
吉間 まさに、こういうことがしたかったんですよ!ディレクターさんやデザイナーさん、そしてお客さんとも密に関わるということを初めて体験できました。実際にやってみると、決して良いことばかりではなく、いろいろなことがあって。自分が求めていたことは、こんなにも大変なんだなと実感しましたね。これまでのような浅い関係では気付けないことが、そこにはたくさんあったんです。
距離が近くなると、もちろん良い一面もあれば、すれ違いや葛藤が生まれることもありますよね。でも、そんな悩みと向き合えるのも、密な関係を築けているからこそなんだと、今回知ることができました。
岡本 たしか、お客さんへデザインプレゼンする場にも吉間さんが同席くださって。私がプレゼンしているところも見守ってくださってましたよね。
吉間 その場に普通、フォトグラファーっていないですもんね。サイトが公開されるまでの流れを知れたことが、自分の中ではかなり大きくて。すごく良い経験をさせていただいたなと思っています。
岡本 私たちが目指しているテイストを理解したうえで撮影くださったことが、本当に嬉しくて。最後はお任せで数枚撮っていただいただいたので、砂丘で吉間さんが無双している時間がありましたよね!

吉間 すごく楽しかったです!もう無意識にシャッターを切っていました。でもそれは、これまでの打ち合わせを通して、チームの皆さんが何を「良い」と感じているのか、ゴールをちゃんと揃えられていたからなんですよね。それを自分なりに感じ取りながら、撮影していました。コミュニケーションが不足すると、どうしても自分だけの視点になってしまうけど、対話を重ねることで少しずつ「自分の視点」から「みんなの視点」へと変わっていきますよね。自然とプロジェクトとして目指すゴールも定まっていきました。
岡本 みんなが撮りたいイメージと本当にドンピシャでした。
吉間 撮影する写真は、「自分だけのものではない」という感覚を強く持っていて。とはいえ、自分を抑え込みすぎるのも違うと思うので、そのバランスを意識しながら、プロジェクトとしてのゴールは何なのかを精査していく時間でしたね。
岡本 今のお話って、デザイナーとしても共感できるところが沢山あって。つい自分の好きなテイストに持っていきたくなることもあるけど、お客さんの目的に沿うように軌道修正しながら進める過程は似ているなと感じます。デザインってアートに寄りすぎても違いますしね。でも、お客さんの意向に沿いすぎると「私がデザインする意味って何だろう?」と考えてしまうこともあって。
吉間 その気持ちはすごくわかります。でも、やっぱりコミュニケーションに尽きるのかなと思うんですよね。今回のプロジェクトを通して、その大切さを改めて感じました。
「良い写真」ってなんだろう?
岡本 吉間さんが思う「良い写真」って、どんな写真なんでしょうか。
吉間 これって本当に難しいですよね。Webサイトも同じだと思うのですが、「良いものを作ります」と言われても、じゃあ「良いものって何?」ってなるじゃないですか。やっぱり制作はお客さんあってのものなので、自分が「良い写真」と思っていても、必ずしもお客さんにとって良いとは限らないですよね。その「良いって何だろう?」という問いは、常に持ち続けていたいと思っています。
岡本 お客さんが喜んでくださって、初めて「良い写真」に昇華するという感覚でしょうか。
吉間 そうですね。仕事としての「良い写真」で言うと、たとえばメインビジュアルひとつとっても、必ず伝えたいことがあると思うんです。その一点を、お客さんも含めたプロジェクトに関わるチームのみんなで、どれだけ意識できているかが大事なところだと思っていて。「こういうことだよね」という共通認識を、コミュニケーションを重ねながら少しずつ近づけて、その共通認識にバシッとハマる一枚が撮れたときは「良い写真が撮れたな」と思いますね。ウィルスタイルさんとの案件は、そういう目に見えない部分でもチームとして一つになれる感覚があって。それがすごくありがたいなと感じています。

人と向き合い、写真と向き合う
岡本 お客さんの撮影に同行させてもらうと、吉間さんはどんな現場にもすっと馴染むお人柄でコミュニケーションが本当にお上手ですよね。
吉間 人と関わることは、もともと好きですね。でも、それって写真と出会えたことがすごく大きくて。きっかけになったのは、専門学校のときにお世話になった先生から教わった「写真はすべて、セルフポートレート」という言葉なんです。セルフポートレートとは、「人でも、ものでも、何を撮っていても、そこには必ず自分も写っている」という考え方のこと。誰かを撮るということは、その人と同じくらい自分とも向き合わないといけないんですよね。正直、まだすべてができているとは言えないですが、今でも大切にしています。
岡本 素敵な考え方ですね。人数が多くなると、どうしても作業的になりがちですが、そんな状況でも一人ひとり、ちゃんと向き合うことを大切にされているんですね。
吉間 難しいですけど、できる限り向き合いたいですね。できることなら、撮影前の取材にも参加したいなと思っています。どんな人なのか事前にわかったうえで撮影できますし。
岡本 吉間さんは、実際にスタッフさんのインタビューからご参加くださったこともありましたよね。
吉間 そうですね。やっぱり写真の狙いどころもすごく掴みやすかったです。とはいえ、すべてに対してそれはできないので、撮影の中で感じた人となりや、実際に接してみて受け取った印象も大切にしています。

日常がすべて、写真には表れる
岡本 社内では「この案件は、絶対に吉間さんに撮ってほしい」という話題があがることも多いんですよ。それくらい吉間さんのお写真って、唯一無二の雰囲気がありますよね。撮影する時に、なにか大切にしていることはありますか。
吉間 少し伝わりづらいかもしれないのですが、「写真を撮ってない時こそ、一番写真を撮っている」という気持ちで生活することです。普段何気なく接するものや見ているもの、感じることって、全部写真には表れると思っていて。だから、ニュースを見ていても、本を読んでいても、音楽を聴いていても、それを自分がどう感じるのかを一番大切にしていますね。案外撮ってる時には何もしていなくて、むしろ無になるぐらいがちょうどいいのかなと思っています。
岡本 普段の生活が自然と写真にも表れるんですね。なんだか、すごくわかる気がします。
吉間 普段ぼーっと考えてることや、何が好きで、何が苦手で、どういうことをしたら気分が良くて、どんなときに居心地が悪くなって、みたいな。そういう日常を丁寧に生きたいなと思っています。日々の生活を一番大切にすることで、初めて写真と両立できると考えると、自分の中で筋が通る感じがするんです。
岡本 自分の心や生活をすごく大切にされている印象があったので、とてもしっくりきました!本を読んだり、お子さんと遊んだり。そういう日常を丁寧に過ごされてますよね。
吉間 心がすさんでいる時って、どうしても仕事の写真も雑になってしまうので。日々を整えることは、普段から意識していますね。
岡本 なるほど。だから、あの雰囲気がだせるんですね。

最後に
岡本 「今後はこんな制作がしてみたい」とか、なにかイメージされているものはありますか。
吉間 今って、なんでも「それ、AIでいいよね」って言われる時代じゃないですか。だからこそ、「これは人じゃないとダメだよね」というものが、これからはより大事になってくる気がしていて。どんどん価値が生まれていくと思うんです。ウィルスタイルさんの制作って、まさにそうですよね。「好き」とか「楽しい」とか、人が関わるからこそ生まれる感情がちゃんとあって。そんな想いがたくさん詰まった、人が関わる意味のある制作をこれからもしていきたいですね。
岡本 Web制作って、そういう意味ではAIにとって代わられる可能性のある業種だと思うんです。その中で、ウィルスタイルの価値を感じてもらうには、「人」の部分でしっかり差別化して、うちにしかつくれないものを形にしていかなきゃいけないね、という話は社内でも最近よくしています。
そこには、撮影も必ず入ってくると思っていて。だから、こんなふうに同じ目線で考えてくださるパートナーさんがいることは、本当にありがたいです。
吉間 こちらこそです。ウィルスタイルさんとの今後のお仕事も楽しみにしていますね。

インタビューの前には「今年一緊張しています…」と照れ笑いを浮かべていた吉間さん。そんな言葉とは裏腹に、質問一つひとつにじっくりと丁寧に向き合いながらお答えくださいました。同じ目線で悩んだり、一緒にわくわくしたり。そんなふうに心の温度が伝わる距離感で制作をともにしてくださるパートナーさんの存在は、私たちにとって本当に心強い存在です。
吉間さん、素敵なお話をありがとうございました。
また制作をご一緒できる日を心より楽しみにしています。
これまで吉間様に撮影をご担当いただいた実績をご紹介させていただきます。
素敵なお写真を撮影いただきましたので、ぜひこちらもご覧ください。
Interviewer:Designer : Ayaka Okamoto
Author:Designer : Yuki Ozawa
Photo:Designer : Yuki Ozawa , Takuma Yanagawa