うなぎ料理 鹿六 unagi-shikaroku.jp

Category | Works

Credit

Account Director : Kousuke Sakaguchi
Designer / Engineer : Masaki Yamada
Director : Yuri Torigaki

継承される味。想い。

「市に名代の鰻屋があって、朱塗りの浅い容器のなかに、底には一面に山椒の若葉を敷いた上に蒲焼を置いたのが、蓋をあけると先づ香気が鼻を打ち(中略)、見た眼にも美しくて食慾をそそった」
これは、近代日本の詩人・作家である佐藤春夫が執筆した「うなぎの話」という随筆の一小節です。ここで登場している鰻屋が、和歌山県・新宮市のうなぎ料理 鹿六様(以下、「鹿六様」)といわれています。
鹿六様は100年以上の歴史を持つうなぎ料理の老舗。「最後の一口まで美味しく食べていただきたい」という想いを受け継ぎ、初代からの味を守り続けていらっしゃいます。4代目のご主人浦中紀清様にお話を伺うと、「先代から調理法を教わる時は、すべて口頭で説明されていました。メモを書き留めないように言われていたので、レシピのような形式的なものは残っていないんです。」という思いがけないお言葉が。目で、鼻で、舌で、五感を通じて受け継がれてきた調理法なのだと感銘を受けました。

名の知れた老舗店のため、地元のお客様はもとより、遠方から足を運ばれる方も多いとのこと。事前に店舗情報を検索した上で来店される方が多いという傾向を踏まえ、Webサイトの新規制作をご依頼いただきました。
お店の情報はもちろん、鹿六様のこだわりや歴史、そして継承されてきた皆様の想いを伝えるサイトを目指し、構成を検討しました。

devices

歴史の重みと和の温かみ

高級感や重厚感を演出するため、ベースカラーには濃紺を使用しました。紺色は後退色(他の色と並べると遠くにあるように見える色)かつ収縮色(同じ面積でも他の色より小さく見える色)、つまり、後ろに控え引き締めるという性質を持つため、お写真をより一層引き立てるという効果を伴います。

もう一つのポイントは、うなぎ料理は日本の食文化を代表する伝統料理の一つという点です。フォントは明朝体を基調としたり、要所要所に縦書きのテキストを散りばめたりと、「和」の要素を取り入れました。
さらに、メニューは「お品書き」、ブログは「鹿六だより」とナビゲーション名にもこだわり、日本情緒をプラスしています。

device-pc
device-sp

想像を掻き立てるキービジュアル

お打ち合わせ・撮影のため新宮市にお伺いした際、実際にお食事もさせていただきました。鰻重や鰻丼の一番の楽しみといっても過言ではないのは、やはり蓋を開ける瞬間。期待に胸を膨らませながら蓋をとると、香ばしい香りがふわっと漂い、佐藤春夫が言う「先づ香気が鼻を打ち」を身を持って体験しました。この瞬間、このわくわく感をサイトでも表現できないかと思い、キービジュアルは「香り」に焦点を当てています。
キャッチコピーでは、鹿六様の歩みを象徴する存在として香りを表現しました。初代から受け継がれてきた調理法や秘伝のたれ、それに伴う香りは鹿六様の伝統そのものです。積み上げられた歴史、そしてこれからも続いていく未来の中で変わらない香りを表現するため、「時の流れに漂う」というフレーズを使用しました。世代を超えて愛されるうなぎ料理専門店であり続けたいという皆様の願いも込めたキャッチコピーとなっています。
さらに、キービジュアルに使用した動画は、料理が運ばれてくるまでをイメージして構成しました。うなぎを焼いているシーンに盛り付ける場面、調理風景をふんだんに盛り込むことにより、その時々の香りを想起していただくと同時に、ひとつひとつの工程に真摯に向き合われているご主人の姿、こだわりをご紹介しています。

想像を膨らませた上でお店に足を運んでいただき、ご自身でその香りを、そしてお食事を楽しんでいただきたいという意図を込めたキャッチコピー・動画です。

device-pc
device-pc
device-pc
device-pc

知りたい情報も、新たな発見も。

長い年月を偲ばせるような情緒あふれる新宮店。70年以上もの歴史を紡いできたという新宮店ですが、途中、建て替えを検討されたこともあったそうです。しかし、地元の方からそのまま残してほしいというお声があがったため、形を変えることなく現在も引き継がれているとのこと。地域の皆様から愛され、鹿六様も地元のお客様を、新宮地域を大切に想っていらっしゃるのがひしひしと伝わるお話でした。地元のお客様にも新たな発見をしていただけるようなコンテンツを設けたいと考え、「鹿六の歴史」では、店名の由来をはじめとし、これまであまり語られることのなかったエピソードをご紹介しています。

さらに、初めての方も安心してご来店いただけるよう事前に店の様子や情報を見ていただけるサイトにしたいというご要望がありました。そのため、店舗案内のページには内観・外観のお写真をふんだんに掲載しています。加えて、お客様からよくお問い合わせがあるご質問をまとめたページは「ご来店の前に」というナビゲーション名を用い、ご来店前に目を向けていただけるようにしました。
また、観光で足を運ばれるお客様へ向けて、より新宮市を楽しんでいただくため「おすすめ観光ルート」というページを設け、和歌山県の名所熊野三山を巡る一泊二日のルートを考案しました。各観光スポットの位置関係についても、地元の皆様に一つずつ確認をとりながら策定した経路です。豊かな自然に囲まれ、世界遺産が日常の風景に溶け込むように存在している新宮市の魅力を凝縮しました。

device-pc
device-sp

制作期間を振り返り

遠方かつコロナ禍のため、直接お会いできる機会は決して多くなかったのですが、その分オンラインでのお打ち合わせやお電話・メールでのやり取りを密に重ねました。貴重なお休みにもかかわらずお打ち合わせにご参加くださったご主人、原稿作成や素材あつめにお力添えくださった奥様、撮影に用いる料理の準備など快くご協力くださったスタッフの方々。皆様の多大なるご尽力があったからこそ、こうして無事公開に至ることができたのだと実感しております。今後も情報発信の場としてサイトをご活用いただけるようサポートさせていただきます。

また、今回撮影はアスカフューネラルサプライ様にご協力いただきました。アスカフューネラルサプライ様は新宮市の葬儀会社様ですが、葬儀に限らず地域のイベント運営やデザイン業など、個人の特性を活かして幅広く活躍されているスタッフ様も多数いらっしゃいます。これまでコーポレートサイトやリクルートサイトの制作をご依頼いただいたご縁もあり、今回は広報・デザインを担当されている小松様にご協力をお願いすることになりました。仕込みシーンの早朝撮影などご無理をお願いする場面も多々ありましたが、小松様はいつも快くお引き受けくださり、さらにアイデアをプラスして新たなご提案をしてくださりました。クリエイティブ力を最大限に発揮していただき、お力添えを賜りましたこと、この場をお借りしてあらためて御礼申し上げます。

制作に携わってくださった皆様の熱い想いが詰まった本サイトが、鹿六様の更なるご発展に寄与できることを願っております。

Company information

〒650-0024
神戸市中央区海岸通5 商船三井ビルディング4F

Contact us

WEBに関するお問い合わせは
078-977-8760 (10:00 - 18:00)