Designerの松並です。3月に入った途端に暖かい日が続いていますね。さらに花粉も飛び出しているようですね。
私は花粉症ではないのですがこの時期が来るたびに、いつか自分も花粉症に侵されてしまうのではないかと心配しております。
さて、そんな花粉と同じように人に害をもたらす可能性のある「ダークパターン」と命名されたユーザーを騙すことを目的とするユーザーインターフェースが存在することをご存知でしょうか?
今回はそんなユーザーを欺くことを目的としたデザイン「ダークパターン」を解説させていただこうと思います。
Table of contents
ダークパターンとは?
ダークパターンとはユーザーを騙す目的で作られたユーザーインターフェースであり、決して間違ったデザインというわけではなく意図的に作られたデザインなのです。人間の心理をよく理解し、注意深く作られていますが、ブランドの利益を優先し、ユーザーの利益は考えられていません。
ユーザーに選択肢を与えずに強制的に誘導するようなもの、誘導したい選択肢以外のものを気づきにくくするもの、分かりにくくするもの、対象を選択することに対し過剰なコストを要求したりするもの、ユーザーが見落とすことを期待しているようなものなど、ダークパターンの中でも、そのレベルは様々です。
ロンドンのデザイナー、Harry Brignull氏は、ダークパターンについて広く理解を求め、
よりよいネット世界を実現することを目的とするため、WEBサイトを公開しています。
ダークパターンを使ってしまう理由
ダークパターンが至るところで見られる理由は単純で、コンバージョン率の向上に即効性があるからです。数値上の利益を追求した結果、デザイナーはユーザーファーストなデザインではなく依頼者の要望に応えるためにダークパターンを使ってしまうのです。
ブランドは売上を増やし、多くのデータを収集し、メールアドレスのリストを集め、ユーザーの行動をコントロールしたいのです。
短期的には利益が増えるような結果になるかもしれませんが、実際にはブランドに長期的なダメージを与え、信用を失ってしまう可能性があります。故意にユーザーを欺くようなデザインを使用していることがユーザーに気づかれた時、ユーザーからの信用はすぐに壊れてしまいます。ダークパターンを取り入れることによってブランドの評判がガタ落ちしてしまうことにつながります。
本当に優れたユーザーエクスペリエンスをデザインすることよりも自己の利益のみを優先していると、ユーザーはそのうちそれに気づくでしょう。そのような悪質なデザインはユーザーのストレスとなります。ユーザーがこういった卑劣なデザインを認識するようになると、ダークパターンを使用しているブランドは非倫理的な企業だとみなすようになり、今までに培った信頼や忠誠心が一瞬にして離れていってしまいます。
ダークパターンで作られたデザイン
01.偽装広告
こちらはWebサイトのコンテンツや誘導に偽装することでクリックを誘う広告のことで、あたかもそのサイトに元から存在していたかのようにデザインされた広告のことを指します。
02.サービス継続の強制
Webサイトを無料試用する際にクレジットカード情報の入力を要求し、試用期間が終わったあとも自動的に有料サービスとして継続するもの。また、いったん利用を開始したサービスの利用停止の手続きが難しいことなど。解約の手続きなどシンプルにさせることができるものを混乱を招くような導線でユーザーを誘導します。
03.オプトアウトメール
ECのWebサイトは、アカウント作成時などニュースレターの購読をしないことを自分で選択しなければならないものがほとんどです。うっかりしていたりすると「お知らせやプロモーションに関するニュースレターに登録する」ボタンにチェックが入っていることに気付かず登録後に身に覚えのないメールを受信してしまうのです。。しかし、長い目で見れば、このオプトアウト戦略はユーザーとの関係を悪化させてしまうことになりかねません。登録した覚えのないメール受信をありがたがる人は少なく不信感を抱きかねないためです。
04.見えにくい配信停止リンク
先程の「お知らせやプロモーションに関するニュースレターに登録する」ボタンにうっかりチェックを入れてしまい身に覚えのないメールを受信したユーザーは、そのメールの配信を停止させることを考えます。しかし、ここにもダークパターンが利用され、ユーザーに見つかりにくい配信停止リンクを設置しているのです。
配信停止リンクを隠したくなる気持ちも分かりますが、配信停止をしたがるユーザーはそもそもコンバージョンに貢献する可能性は限りなく低いと思われます。
配信停止率が高すぎるという問題をかかえているなら、見えにくい配信停止リンクを設置するのではなく、ユーザーに購読頻度を決めてもらうなど、ユーザーファーストな考えを大切にすることが結果的に購読者の満足度を高める結果につながり、コンバージョンに貢献されていくのではないでしょうか。
最後に
どこまでが「ダークパターン」で、どこからが「ダークパターンとまではいえない、単なる分かりづらい・使いづらいUI」という線引きはもちろん容易にはできません。しかし、悪質な要素はできるだけ排除するというのは、優れたユーザーエクスペリエンスをもたらすための 一つの指針になり、デザイナーは依頼者の要望に応えるだけでなくユーザーファーストを一番に考え提案することが大切になるでしょう。
デザインを通してユーザーとの信頼関係を築いていくことがこれまで以上に重要であり、それはビジネスにおいても同じです。デザイナーは、ブランドとユーザーの双方に対する責任があり、優れたユーザーエクスペリエンスを提供することがデザイナーの仕事だと思います。
そうすることによって、ブランドとユーザーの間の信頼性が高まり、今後もそのサービスを使い続けてくれる可能性が高まり、長期的に見ると、ダークパターンを使って得られる短期的な利益よりもはるかに持続可能で価値あるものだと思います。